最終兵器彼女を観た
■批評
控えめに言って、おもしろい。
世界・命・愛という題材に真正面から切り込んでいく気概が素晴らしい。
また、いわゆる「セカイ系」の代表作と扱われているだけあって無駄なプロットが存在せず、非常に洗練されている点も評価できる。
間違いなく後世に残るべき良作。
ただ、良作には大衆に広く刺さるタイプとニッチな層に深く刺さるタイプがある(この二つを兼ね備えたものが名作)が、最終兵器彼女は紛れもなく後者。
社会的に逸脱した価値観を強要するセカイ系はなかなか人に薦めづらい所がある。
強いていうなら、自身の人生がうまくいってないと感じずにはいられない人にオススメ。
■簡単なあらすじ
付き合い始めた彼女が突然改造されて国の最終兵器になった!(初代仮面ライダー的なノリ)
最終兵器だから自分の意思と関係なく、戦争相手の兵士をサーチ&デストロイ!
↓
戦争を経るごとに、身も心も兵器に侵食されていくという事実に苦しめられる彼女と、そんな彼女を守ってやれない己の無力さにうちひしがれる主人公。
その裏で戦争は激化し、世界の終わりが刻々と近づく…。
そんな感じ。
■感想
ここからは一個人の感性に基づいた感想。
こういった類いの作品を観ると、いつも俺には「厳しい世界vs.無力な主人公」という構造が魅力的に映って見える(そのせいで最近 自分にはペシミストの毛があるのかもしれない、などと薄々気づきつつあるが、、)。
この原因は恐らく俺の人生論にある。
リアルな話、元々 唯我を地で行く自分にとって世界とは生きるのを阻むまどろっこしいものであるという印象が強い。
雨や地震といった自然現象から社会規範・人付き合いまで、世界を構成するピースはなにかと俺を鬱屈とした気分にさせる。
「現実はクソゲーだ!」なんて言葉もあるけど本当にその通りじゃないか?
毎日毎日しんどい事の連続で、こんな息苦しい世界好んで産まれてくるものでもない(異世界転生という題材が最近流行っているのはこういった思想に由来しているのかもしれない、実はみんな世界に絶望しているのか…?)。
とはいえ、唐突に命を絶つ度胸もない俺がこの世界で生き残るためには自分を生かす理由が必要なわけで。
自身の命の価値を見出だせないままズルズル生きた20年余りの時間を経てやっと自分を生かす理由を見つけた時、俺は一つの人生論に辿り着いた。
それは、人生とは 俺を殺そうとする世界 と 俺を生かそうとする俺 の戦いである、というもの。
最終兵器彼女及び他作品類では、思わずドロップアウトしてしまいたくなるほどに厳しい世界に挑む主人公の生き様が描かれている。
これは紛れもなく俺の考える人生の構造そのものである。俺が完全に没入し、感激に至る理由はここにある。
そして、俺がこういった類いの作品を好む真の要因は主人公らが最後に報われるという所だ。
世界の終わり、すなわち人生の終わりにこれまで生きてきた意義を実感できるとはなんと羨ましいことか、俺は彼らの結末をみる度にそう感じずにはいられないのだ。